血圧正常、体重900㌘増加。
よし。まだ1㌔もいっていない。
この日からお腹の上からのエコーに。
「次からUSB持って来たら赤ちゃんの映像とってあげられるからね。」
よし。絶対持ってこよう。
エコー始まる。
お。ピコピコ心臓動いてる!
ふぅー。一安心。
無言。
無言。
無言。
あれ?
一人目のそうたろうの時、もっと、
「これが足でこれが手だねー。」
「顔がこれねー。」
「今は○○㌢だねー。」
という会話が普通にあったはずなのに。
無言。
不安。
心配。
ドキドキ。
「あ、これ心臓ですよね?♪」
無視。
え?無視?
あれ?しかも首かしげながら映像見てる!!
それに気づいてから、頭の中はパニック。
何か異常があったのかな。
だからこんなに無言なのかな。
そうしたら、
「ど、どう?最近はつわりはおさまってきたかなー?」
ギコチナイ棒読みで。
「全然まだなんですよ!先週末も吐いて、けっこう辛かったです。」
「そ、そうなんだー?風邪ひいてるとかはない?最近流行ってるみたいだよ。」
「風邪?たぶんひいてないです。」
無言。
無言。
「家族はどう?風邪ひいてる人いない?」
「はい。誰もひいてないですよ。」
無言。
無言。
「上の子は、えーっとー、5歳になったのかな?」
「はい。」
「どう?上の子は風邪ひいてない?」
「?はい。別にひいてないです。」
無言。
どうして周りに風邪ひいてる人がいないかこんなに聞くんだろう?
そこ重要なのかな?
かなり不安。
長すぎる。
エコーが長すぎる。
「はい。じゃーー……えーっと……。ね。あとでね、先生の方からお話があるんでね、待合室の方でお待ちください。」
この意味深な言い方に、
「何かあったんですか?」
と、すごく聞きたかったけど、聞いたら後悔する気がして怖くて聞けず。
結局いつもならもらえるエコー写真ももらえないまま待合室へ。
待つこと1時間以上。
エコー終わって、先生と話すまでに、こんなに待ったことがない。
後に来た人たちはどんどん帰っていく。
だんだん、あれ?もしかして、わざと最後になるように回されてるのかな?
という事に薄々気づき出す。
「半田さーん。」
呼ばれて診察室へ行こうとしたら、看護師さんがササササと寄ってきて、
「今日は一人で来たのかな?」
絶対おかしい。
この質問絶対におかしい。
心臓バクバクしながら、診察室のドアが開いた。
さっきのエコー写真がいつもよりもかなり多い枚数並んでいて、
それを先生や看護師さんが6人程で囲って、小声で深刻そうに何かを話し合っている。
何?この光景。
頭の中は真っ白。
心臓バクバクどころじゃない。
何を言われるのか全くわからなすぎて、予測不可能すぎてパニック状態。
イスに座っても、誰もまだ何も話してくれない。
やっと話してくれたと思ったら、さっきとは違う看護師さんに、
「今日は一人で来てる?誰か一緒に来てない?」
また確認される。
そうとう内容が深刻なのはよくわかった。
やっと先生がしゃべったと思ったら、
「ちょっと中から見たいから、内診台の方あがってもらおうかな。」
と言われて、いったい何が起きたのか誰も何にも言ってくれないまま。
「やだ。怖い。何かあるんですか?」
と、声がすごく震えたけどやっと聞けた。
でも、
「うーん。ちょっとね。うん。胎盤の位置を確認させてね。」と。
今思えば、完全にごまかされただけだけど、その時は、
胎盤の位置ね!
何かで読んだことがある!
位置が悪いと剥がれそうになったりで、すぐに入院して安静に!
そういうのがあった気がする!
そうか。それか!
胎盤の位置がけっこう悪いところにあるんだ。
でもたしか絶対安静を守って入院していれば、無事だった気がする。
と、少しホッとしながら内診台。
顔のすぐ横にある画面にエコーがうつるけど、なんとなく怖くて見れない。
それよりも先生たちのヒソヒソが気になって仕方がなかった。
うーん。やっぱりどうのこうの。
ここがあーのこーの。
だからあーのこーの。
全然聞き取れないけど、かなり深刻気味。
内診終わって、パンツをはかないといけないけど、足がガクガクに震えてうまくはけない。
また先生の前に座る。
でも、カルテにスラスラスラーと何か書いて、
んーーーー。
と考えて、また何か書いて。
まだ何があったのかを話してくれない。
「これね、今日のエコーなんだけど。」
バクッ!!
心臓が痛い。
今から何か言われると思うだけで、過呼吸になりそう。
「ここわかる?下が黒くなってるでしょ?頭の下と、ここ背中なんだけど、背中の下のとこも黒くなってるでしょ。」
「はい。」
「これね、赤ちゃんむくんでるんだよね。」
全く知識がないせいで、会話の先が読み取れない。
「でね、ここ、頭の後頭部なんだけど。体の大きさに比べて、頭の大きさがちょっと小さいんだよね。ていうのは、後頭部が成長してないのよ。」
「????はい。」
「前回のエコーではね、別にそんなふうには見えなかったんだけどね。
今回ので見ると、んーーー。まー、要は脳がないんだよね。」
「え?!」
「無脳児って言うんだけどね。
こういう事、稀にあるんだよね。
お母さんのお腹の中では生きれられるんだけど、脳がないから、産まれても生きられない。
今の段階での治療法っていうのは、何もないんだよね。」
…。
お腹の中では生きられる。
でも、脳がないから、産まれても生きられない。
全然わからない。
全然整理できない。
「え。どうしたらいいんですか?」
「今妊娠14週だよね。そうすると、妊娠12週以降の場合は、普通のお産と同じ形で赤ちゃんを出すしかないんだよね。。。中絶という事になっちゃうんだけど。」
「中絶?!」
「うーーーん。無脳児ってね、脳がないだけで、体はほんと普通に育つんだよね。目もちゃんとあるしね。心臓もちゃんと動いてるから、どうしても中絶という言い方になってしまうんだよね。母体のリスクを考えて、母体保護法で中期の中絶をしてもらうことになってしまうんだよね。。。」
と先生がすごく言いにくそうに。
申し訳なさそうに。
のちのち、ネットで調べたとある記事に書いてあった。
「一般的に、医者から中絶を勧めることはほとんどない。
ただ、無脳症の場合だけ、唯一医者が中絶を勧める病気である。
それ程、無脳症というのは、絶望的な病気である。」
と。
頭の中で整理を全く出来ていないし、現実に心が追い付いてないし、そもそも全く現状を理解できていない。
「じゃー、奥で入院する日を決めてね。」
と別の部屋に。
一人でボーッと考える。
でも何から何を考えたらいいのかがわからなさすぎて、結局何も考えずに座っていた。
看護師さんが来た。
「大丈夫?今どんな気分?」
と、すごく優しく声をかけてくれた。
「はい。大丈夫です。どんな気分?よくわからないです。
何が起きてるのかがまだ整理がつかなくて。」
と話したらいっきに涙が出た。
「そうだよね。1回また旦那さんと一緒に来れるかな?旦那さんに先生の方からお話してさ。」
と言われたけど、
「でもまた来ても、さっき聞いた話と全く同じ話を聞かされるだけですよね。
なら、今日、自分で話します。」
と言ったら、
「ちょっと待ってね、」
と出て行って、他の人にコソコソと何かを話に。
その時に、
さっきの看護師さんが手に持ってたカルテに、
「分娩予約済」の赤い大きいスタンプが名前の横に押されてたけど、
定規でしっかりバツッ!!て書かれてたなーって気づいた。
これからどうしよう?
よりも、そんなことを考えてたら、今度は違う看護師さんが来た。
外来看護師主任だった。
「半田さんね、旦那さんと明日にでも来れないかな?」
「来るなら土曜日じゃだめですか?来ないとだめですか?」
「出来ればね、お仕事お休みとれるなら、明日にでも一緒に来てほしいだよね。
先生の方から旦那さんにもしっかり説明して、ちゃんと納得した上で入院の日にちを決めていきたいからね。」
なんとなく病院側の意向も理解できた。
「一緒に来れる日の当日でもいいから、今日行けます。って電話して来てね。」
という事で、帰ることに。
受付戻ってみたら誰もいない。
ボーッと待って、お金払って、車に戻って、すぐ旦那のはんちゃんに電話をした。
声を聞いた瞬間に、号泣。
話さなきゃと思っても、とりあえず、溜まってた分全部号泣。
事情を説明したら、
「明日一緒に行くよ。」
と言ってくれた。
帰る前に母にも電話。
一通り説明してると、先生に言われたことはしっかり分かってはいるけど、
ほんとにこれが自分に起きてる事なのか?!
と受け止めれなくて、泣けてくる。
とりあえず帰宅。
実家に。
でもボーッとするだけで、全然何を考えたらいいのか整理がつかない。
ざるそばを作ってくれたけど、少し食べてみたものの喉をとおらず、アパート戻ることにした。
とりあえず、これからどうしよう?というよりも、この状況を今すぐ知らせないといけない人たちに、何て説明しよう?と悩んだ。
保育園の先生たちもみんな妊娠してるのは知っているし。
あんなに喜んでくれた、一人息子のそうたろうにもなんて言ったらいいんだろう?
そのことばかり。
姉の長女のひろみと、次女のえみに、赤ちゃんの事、中絶をしないといけない事を報告。
自分の弱音と一緒に報告。
そしたらひろみは、
その子にとってはなみ(私)はお母さんなんだから、頑張れ!
と背中を押してくれた。
ひろみらしいな。
と泣けた。
えみは、
頑張らなきゃとはいいつつ、小心者のはなみが心配だよ。
と、心配してくれた。
えみらしいな。
と泣けた。
友達のさやかに報告。
電話くれた。
さやかも妊娠中期で亡くなった赤ちゃんをお産して出すという経験をしているから、
ツライ気持ちすごくわかるよと言ってくれた。
それだけで泣ける。
友達のすみこちゃんに報告。
状況は全く違うけど、すみこちゃんも臨月で産まれた赤ちゃんを1ヶ月で亡くしている。
辛いときにそばにいてあげられなくてごめんね。
どんなことでも話は聞いてあげられるから、いつでも連絡してね。
と、その優しい気持ちにまた泣ける。
報告していくとだんだんと自分の状況を理解できるようになり始めた。
そうたろうのお迎えまでとりあえずテレビでもとつけてみたけど、見る気分になれなくて消した。
そうしたら旦那のはんちゃんが帰ってきてくれた。
ほんとに、ほんとに嬉しかった。
今、1番状況を一緒に理解できる相手。
この日は、
こんなこともあるんだ?!
こんなことが自分にも起こるんだ?!
夢じゃなくて?!
今日ほんとに病院行ったんだよね?!
そんな事ばかり。
そうたろうのお迎えをはんちゃんと一緒に行ったら、はんちゃんもいることがかなりのサプライズで、すごく喜んでくれた。
その姿に少し癒された。
最近お迎え行くと、妊娠の話題を先生からも出されるから、
「そうたろうくんがお母さんオェッってよく言うだよって言ってたよ。まだつわりひどいの?」
「そうたろうくん、ほんとにいいお兄ちゃんになりそうだよ!」
そんな会話をされても悲しいので、くまだ先生に報告を。
泣くつもりは全くないのに、やっぱり話すと泣けてしまう。
人に報告をするたびに、じわじわと実感。
夜、自分なりに「無脳症」について色々と調べてみた。
知れば知るほど怖くなる。
自分の子の状態に少し怖さを感じることにへこんだり。
坂道をゴロゴロゴロゴローーーと転がるように落ちていく気分。
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